2008年7月25日金曜日

優しい白い花のような  芦川いづみ




私はサユリストならぬイズミストである。
好きな女性のタイプはと聞かれれば、即座に答えるのがこの人の名前だ。
このブログをはじめるにあたって、やはり私が思いを募らせた一番の女性は、なんといっても芦川いづみ様をおいて他にないことを改めて認識したのであった。

見初めたのは中学生の頃にさかのぼる。場末の三番館で赤木圭一郎の『霧笛が俺を呼んでいる』で出会って以来夢中になって、よわい50を超えた今に至るまで、彼女の面影を一途追い続けている。

霧の波止場にマドロスの赤木圭一郎との別れのラストシーン。彼女は憂いを含んだ表情で立っている。
杉(赤木)  「めまぐるしい数日で悲しいことも多かったけれど、あなたと一緒で楽しいこともありまし
        た。最初の霧の晩、ホテルの窓辺で初めてあなたとお会いしたときの霧笛が、今でも耳に
        残ってます」
美也子(いづみ)「さようなら」
杉(赤木)  「ごきげんよう」

既にすっかり諳んじてしまった台詞だが、いまだにそのシーンが見たくて2ヶ月に一度はDVD(最初は録画したVTR、その後はセルで買ったVHSだった)を飽かずに観てしまうのである。ブルーの縦じまのワンピースがまた本当に可憐で清楚な彼女を際立たせているんだなあ、これが。
唇の端が上に向いたキュートな表情、清楚だけどしっかりとした芯を感じさせる立ち振る舞い、可愛らしくもあるがその奥に光る知性。スクリーンでテレビで観る度に甘酸っぱい気分に立ち返らせてくれる人なのである。




当時の愛称は“お麦”。有馬稲子に似ているけど、稲より細いからということらしい。また石原裕次郎は別に“ねずみ”と命名した。しかし有馬稲子より断然知的に見えるし、ビーバーみたいな裕次郎に言われる筋合いはない。ただそう言われれば裕次郎と海外ロケを敢行した『アラブの嵐』(61年)での白いドレス姿は、チャーミングなハツカネズミといった感も確かにある。
イラストレーターの開祖・中原淳一は“芦川さんは優しい白い花のような印象の人だ”と「じゅにあそれいゆ」に記したそうだ(ファンサイトより)。
中原の描く少女の世界観は、まさに彼女のイメージを髣髴させる。

私が雑誌の仕事をするようになったとき、彼女はとうに芸能界を引退しており実際にお会いできるすべはなかった。同時期の日活の大女優だった浅丘ルリ子にインタビューしたときでさえ、彼女ではないことをうらみながら当時の話を聞いたものだ。
引退後既に40年を超えてしまい、その間もメディアの前に姿を現すことはなかった。が、最近、宍戸錠をはじめかつての日活の俳優たちの同窓会が開催され、久々に彼女の姿があったと報じられた。伝えられるところによると、年月は経ていても“優しい白い花のような人”という印象そのものだったという。

芦川いづみ
1935年10月6日、東京都出身。
法政大学潤光女子高(現法政大学女子高)を中退し松竹歌劇団舞踊学校に入学。1953年にファッションショーに借り出された際、川島雄三監督に見出され『東京マダムと大阪夫人』に起用され女優デビュー。その後川島監督とともに日活に移籍。『洲崎パラダイス赤信号』(56年)、『幕末太陽伝』(57年)と立て続けに川島作品で脚光を浴びる。以後、石原裕次郎、赤木圭一郎、二谷英明といったスターたちと共演し日活黄金時代を支え続けた。葉山良二とのロマンスがささやかれたが68年に藤竜也と結婚し、惜しまれつつ引退。
主な作品
『洲崎パラダイス赤信号』(56年)
『乳母車』(56年)
『幕末太陽伝』(57年)
『嵐を呼ぶ男』(57年)
『陽のあたる坂道』(58年)
『霧笛が俺を呼んでいる』(60年)
『あした晴れるか』(60年)
『あいつと私』(61年)
『アラブの嵐』(61年)
『憎いあンちくしょう』(62年)
『青春を返せ』(63年)
『若草物語』(64年)
『日本列島』(65年)
『四つの恋の物語』(65年)
『源氏物語』(66年)

私設ファンサイト
http://yokohama.cool.ne.jp/omugi/

2 件のコメント:

ハリイライム さんのコメント...

HP開設おめでとうございます。
秋山さんが芦川いづみのファンだとは知りませんでした。
芦川さんに関してはひとついいエピソードを知っています。ご主人の藤竜也が主演した大島渚監督の「愛のコリーダ」(1976)の完成披露記者会見が帝国ホテルで行われた時のこと。
この映画は日本初のハードコアと騒がれ、主演女優の松田英子との本番が話題になっていました。記者会見の始まる前に松田英子と芦川いづみが密かに対面していました。
松田英子は内心ドキドキでどう対応したらよいのか不安で一杯だったようですが、自分の亭主と本番をした相手に開口一番、芦川いづみは「主人がお世話になりました。」とあの優しい顔で頭を下げたそうです。さすが大女優です。妻の座は強い(?)。

秋山光次 さんのコメント...

>ハリイライムさん

レスありがとうございます。

そんなことがあったんですねえ。その頃はいづみ様も40代の女ざかり、役とはいえ胸中複雑だったでしょうに。

いやいい話ありがとうございます。どこかでいづみ話になったらエピソード使わせてもらいますw